GB DECCA BR3052 キャスリーン・フェリアー フィリス・スパー イギリス民謡を歌う KATHLEEN FERRIER Recital(10インチ盤)

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34-23099

商品番号 34-23099

通販レコード→英ED1盤10㌅[オリジナル]

〝吹けよ風よ南風よ〟 ― 声は拡散であり、浸透であり、肉体の全領域、すなわち、皮膚を通過する。声は通過であり、境界、階級、名前の廃絶であるから …… 幻覚を生む特殊な力を持っている。したがって、音楽は視覚とはまったく別の効果を持っている。そもそも人間の耳そのものが〝trans-sexual (性域外)〟のものに「天使的な崇高」を見出す傾向が多いという特徴を持っている。別の言葉で言ってみると、小鳥のさえずりから天使の声への「生成変化」が起きているのだ。つまり、オペラの究極的な美学とは、実はこのような〝trans-sexual〟な声によって人間に常軌を逸した恍惚を与えることにあった。当時マリア・カラスとレナータ・テバルディは好敵手とされたが、彼女同士は仲良しだった。どちらが優れたソプラノか、ヒロインになりきっているだとかと対比されるが、それぞれの歌声が聴くものの身体に浸透し、オーガズムを引き起こす歌声がどちらかということだろう。大衆にとって、歌声の安定や演技の完璧さとは別な次元で、その声が恍惚とさせる歌手がいる。ところでソプラノがヒロインの声ならば、アルトは母声。キャスリーン・フェリアー(Kathleen Ferrier)の声はその温かみと馥郁たる豊かさに満ちた、まさに〝母なる声〟でありました。コントラルトというのはアルトとほとんど同義とされますが、厳密に言えばコントラルトはアルトよりもう少し低い声域を指すようです。もっとも近年はアルトとメゾソプラノもあまり区別がされないようで、総体に低い声域の女声歌手が少なくなっているように思われます。わたしはメゾソプラノの名歌手と云えばクリスタ・ルートヴィヒがまず第一に思い浮かびますが、ルートヴィヒはリヒャルト・シュトラウスのオペラ「薔薇の騎士」のマルシャリンも歌った声域の広い歌手で、本来は声色はやや明る目であるのに少し低く暗めの声をコントロールできる器量だろう。コントラルトはドイツ人女声歌手が主なところから、更に狭義な特色のある低く暗めの声のことを言うのだろうと思います。少女と若い女性と、年老いてからの声というのでなしに若くても子供に話しかける時の母性のあらわれた声というものでしょうか。そういう意味では、これがコントラルトと言える女声歌手は意外と少ない、現代においては特に少ないようです。アイドルグループがチヤホヤされる御時勢だから暗めの声は好まれないのでしょうかね。正真正銘のコントラルト歌手と云えるのはフェリアーあるいはマリアン・アンダーソンといったところでしょう。マーラーの交響曲を一通り聴き進めていくうち、ブルーノ・ワルターとフェリアーの「大地の歌」、「亡き児を偲ぶ歌」は、ほとんどの人が必ず通る道である。しかし、フェリアーはその短い演奏家人生のうちで多くのレコードを残したが、いくつかの演奏は記録されなかった、あるいは記録が破壊されたものもある。たとえばエルガーの『ゲロンティアスの夢』やヘンデルの『メサイア』などはそうである。そうした背景から昔は、フェリアーの新発見の音源が発売されるとなったら大騒ぎだった。さらに今でも待たれる。フェリアーの声は柔らかくあたたかく、しっとりしている。どこにも刺々しさはない。とりすました表情はどこにもない。そういう声・表情で歌われたヨハン・セバスチャン・バッハとヘンデルは、心に沁みた。それまで聴いたどんな音楽よりも、そうだった。フェリアーの録音は少ないので貴重とは云へ、愛好家や蒐集家だけのものであってはいけない。なかでも本盤はイギリス民謡集で、同時代のロジャー・クィルターがアルフレッド・テニスンの詩に書いた歌曲《赤い花びら、優しく眠る》を除いて作者不詳の民謡ばかり。楽曲の芸術的な面白味はないが、素朴な歌だけが持つ生命力は代え難い。そして、フェリアーの声が持つ神秘がこれほど伝わる歌もないのだ。フェリアーは生え抜きの訓練を受けた歌手ではなかった。特に外国語のディクションに関しては満点とはいかなかった。だが、母国語である英語であれば何の問題もない。フェリアーの歌声の深さは歌い進んでゆくと、 言語と歌が一体化し、血として巡って心の奥底から声が発せられる。光の方が増してゆくように、含蓄のある深い声から湧き上がる情念が聴く者を包み込む。《思い出の庭園(サリー・ガーデン)》など、”but I was young and foolish…”(でも私は若くて、愚かだった)のくだりでは犯し難い神聖さを帯びる。馴染みのある曲は少なく、録音は古いが、この1枚は得難い体験を与えてくれるだろう。歌声がかくも慰めをもたらすものかと。フェリアーの歌が心に沁みてこなくなったら、もう終りだと思っている。さて、ドーナツ盤と日本では呼ばれることの多い7インチ(EP)と12インチ(30cm)のLPレコードの間に10インチ(25cm)盤と呼ばれるレコードがあります。収録分数は12インチより少なく、片面15分程。中途半端なサイズと言えますが、何故故このレコードがかつて存在したのでしょう。78回転SP盤の名残で10インチレコードは、かつて使われていたSP盤と同じサイズです。10インチLPレコード、クラシックファンは「トーインチ」と呼び、ジャズファンは「テンインチ」と呼ぶようですが、所謂30センチLPレコードが世に出る前に登場した25センチLPレコードです。1950年代から1960年代前半まで発売されていたようです。クラシックにしろジャズにしろ、30センチLPの中には25センチLPで出ていたものを編集仕直して発売されたものがあり、そうすると25センチLPの方がオリジナル初出盤という事になります。10インチがオリジナルで12インチサイズのLPは後発の編集盤というケースも少なくなく、またLPのために再セッションしなおしたケースも有り、其の儘10インチ盤だけで発売を終えた盤も多くレア盤も多数存在します。

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