「 FR EMI 2C165-52056/9 マリア・カラスの芸術 オペラ歌曲集 L’ART DE MARIA CALLAS+INTERVIEW」を通販レコードとしてご案内します。
カラスは自分が主役となるオペラしか出演を承諾しなかった。 ― 世紀のディーヴァ、マリア・カラスが亡くなってから、もう45年が経つ。1977年に53歳で世を去ったカラスは、生涯最後の公演を1977年11月11日に札幌の厚生年金会館で行っている。満場の聴衆の総立ちの喝采を浴びたスーパースターは、この公演のあとパリの自宅に引きこもり、3年後に早すぎる謎の死を遂げた。しかし、オペラ座での公演はラジオ中継されたし、オペラ映画をつくるのがステイタスでもあった時代も重なり、その録音・映像はかなりの数残されており、これらを通して第2次世界大戦後のイタリア・オペラにおける稀有の逸材の片鱗でも知ることができるのは幸せなことだ。カラスは歌劇における演技力、役の心理の理解に優れた歌手だった。役中人物になりきって歌うカラスは想像以上に美しく激しかった。ボーイトのオペラ「メフィストフェーレ」第3幕で、マルガリータが歌うアリア「暗い海の底へ」の歌い出しがすばらしい。フェードインする歌い出しを、やや暗い声で歌い始めている。この音色の選択の適切なことといったら神技と言い得る。まさに1曲入魂の気迫にあふれた歌をきかせている。すでにこの役柄に完全になりきっているからできることであり、ここではカラスはマルガリータなのだ。音だけの世界からも一人の女の悩み、あるいは喜びといったものが如実に感じとれる。カラスは豊かな美声に恵まれた幸せな歌手と言うよりも、まず演じることの天才であったらしい。ソプラノによるオペラ・アリアの中でも、有名アリアをそろえたコンピレーションでピュアに魅惑を見いだせるのは、オペラの場面を思い起こした上であればこそ、幽玄にしてドラマティックなカラスの歌声が、より説得力を得て至福の空間を作り上げる。オペラのストーリーを理解して、ラジオから聴こえてくる歌声で中世の歴史ドラマをイメージしていた当時のイタリアの聴衆。カラスのアリア集は、美声に酔いしれるだけのポートレイトではなく稀代のディーヴァの、舞台姿を思い起こさせる機会を与えるドキュメントものなのだ。声だけでこれだけの「演技」のできるソプラノは、後にも先にもカラスだけであろう。オペラに興味をもった人なら、ぜひカラスの歌は聴いてほしい。オペラに近代劇の本質をもちこんだ、彼女の演ずるヒロインは総て生々しい人間と化して目前に迫ってくる。カラスが意欲的取り組み、このオペラが再評価されるうえに大きな役割を果たしたケルビーニの歌劇「メディア」(第3幕)を筆頭に、カラスの芸歴の上でも重要なオペラで、カラスによって決定的な人物像にしあげられたベッリーニの歌劇「ノルマ」(第2幕、終場)やドニゼッティの歌劇「ランメルモーアのルチア」(狂乱の場)など有名なオペラから、現代でも上演の少ないオペラまで彼女の魅力を知るには欠かせない名場面ばかりをセレクトした「マリア・カラスの芸術」。
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