「 NL PHILIPS 6768 004 アルフレート・ブレンデル ベートーヴェン ピアノソナタ全集」を通販レコードとしてご案内します。
深遠かつ詩的なピアニスト ― スタッカートが響きの高鳴りと演技性を極度に抑制している。ベートーヴェンの音楽の持つ情熱の爆発や、精神世界に触れたいと期待すると戸惑いを感じる。今や巨匠としてウィーンの伝統的ピアニズムを今に伝える稀有なるピアニスト、アルフレッド・ブレンデルのPHILIPS時代主要曲録音、良い意味で全てが充実していて若々しく音が輝いている。リズムの跳ね具合もフリードリヒ・グルダと対等、またはそれ以上。録音も適度なホールトーンを伴った美しいものが多く魅力的。1948年グラーツで初めてのリサイタルを開いて以来から2008年12月をもって引退するまで、実に60年という長きにわたりハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、リストを中心とするドイツ=オーストリアのレパートリーで比類ない演奏活動を展開してきました。彼が1969年にオランダ・フィリップスと専属契約を結んで制作された2度目のベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集はブレンデルが39歳から46歳のときにかけて行われたセッション・レコーディングで完成されたもので、アナログ後期PHILIPSならではの自然な音質でも話題になりました。演奏も十分な体力に恵まれていた時期のものだけに集中力が強く、細部まで入念に仕上げられた演奏は聴きごたえがあります。ブレンデルの3度の全集はどれも高水準な内容を持っていますが、緻密な完成度の高さではこれが一番かもしれません。ブレンデルのスタイルは強引なところや派手なところのないものながら、常に陰影に富み、内省的なダイアローグともとれる独特の情緒を醸し出すところがある。ある種のドラマ性と言い換えた方が良いかもしれません。多くのピアニストが感情を込めそうなところでブレンデルは肩すかしを食わせてテンポ良く駆けていく面がありますが、そんな場合でも、どこか物憂い情緒が音に感じられる。ベートーヴェンの ― 真骨頂だと思っていますが ― 緩徐楽章で見え隠れする甘い叙情性を音として描き出しています。特筆すべきはピアノの音の綺麗さです。チェコ人のメンタリティと関係があるのでしょうか。メランコリックとまでは言いませんが、この綺麗さはブレンデル独特の世界です。小声で囁いているような内向きの響きには、柔らかくて芯があります。丸い艶と硬質な輝きのバランスが良いPHILIPSの録音に心惹かれます。
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