「 DE DGG 2530 335 ダニエル・バレンボイム ブラームス ピアノバリエーション」を通販レコードとしてご案内します。
ピアノで弾かれた『恋人たち』 ― ピアニストとしての名声に加え、指揮者としてもその活動の幅を広げ、勢いに乗っていた29歳のダニエル・バレンボイムによるブラームスの変奏曲集。構造・構成と全体の統合を音楽の要素として最重要視しているバレンボイムならではの造型感と美意識に貫かれた1枚。2017年はブラームス没後120年、本盤の原題は「ヴァリエーション・フォー・ピアノ」。演奏曲はブラームスのオリジナルではなく他の作品から主題をとっている3曲の変奏曲集 ― 《シューマンの主題による16の変奏曲 嬰へ短調 op.9》の主題はロベルト・シューマンの《色とりどりの作品 作品99》の中の第4曲「アルバムブレッター第1番」、《ヘンデルの主題による25の変奏曲とフーガ 変ロ長調 op.24》の主題はヘンデルの《チェンバロ組曲》の「3つのレッスンの第1曲第2楽章の変奏主題」。そして《弦楽六重奏曲第1番による主題と変奏曲 ニ短調》は1860年 ― ブラームスが27歳の年に作曲した《弦楽六重奏曲 第1番 変ロ長調 op.18》の完成直後に、その中の変奏曲の形をとる第2楽章のアンダンテ・モデラートをピアノ独奏曲に編曲し、クララ・シューマンの誕生日に献呈したものであり、ブラームスの死後30年を過ぎた1920年に初めて出版されたという曰くがあるもの。ルイ・マル監督のフランス映画「恋人たち」(1958年)に用いられ有名になった弦楽六重奏曲のメロディーは、若きブラームスの情熱と瑞々しい感性が溢れ、伸びやかに歌われるロマンティックな旋律です。よもや内緒のラブレターが未来で映画の主題歌になってしまうことをブラームスは思いもしてなかったでしょう。本盤発売より前には、今では当たり前の名曲になっているショパンの「別れのワルツ」や遺作のノクターンが次々登場していた時代でした。この映画で使用された《弦楽六重奏曲第1番》はアマデウス弦楽四重奏団員のレコードが素晴らしく、当時わたしの愛聴の曲となり、ヘビーローテーションで聴いていた頃の出来事を思い出させます。そうした同じ頃にピアノ独奏版があると知りました。それがバレンボイムの演奏との出会いと、その音楽性の虜になったのでした。この曲のレコード録音はこれが最初という事で、バレンボイムの音楽的構造を見事に際立たせた知的なピアノ演奏です。イングリット・ヘブラーと同じモーツァルテウム音楽院で、学んだバレンボイムは椅子を高くして、決して長くはない腕を斜めに下げた状態で鍵盤に腕ごと指を打ち下ろす。そうして生まれる粘着質で重々しいバレンボイム特有の分厚い重い音は、ドイツ系のピアニストのクラウディオ・アラウやハンス・リヒター=ハーザーが持つ輝きを持つ重厚感とも、師のエドヴィン・フィッシャーの音楽とも異質である。彼の弾くハンブルク・スタインウェイから放たれる音楽は、他のピアニストにはない粘りがある。
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