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ルドルフ・ケンペのオペラ録音は、歌手の顔ぶれがいつも素敵だ。 ― 戦争中はワーグナーの音楽がナチス・ドイツのシンボルのようだった。今だからかえってだからかもしれないが、ワーグナーの音楽を嫌うのにナチス・ドイツとの関連を理由にする食わず嫌いがいるが、戦後になり1950年代、様々な歌劇場で毎年のように『ニーベルングの指環』は上演されていた。このケンペがコヴェント・ガーデン歌劇場で上演した1957年ライヴは、ハンス・クナッパーツブッシュがバイロイト音楽祭で上演した一連の演奏とともに最高の名演として高く評価されているものです。1953年にコヴェント・ガーデンに登場、その後20年に渡り数々のオペラ上演を行いロンドンの聴衆、歌手、楽団員から絶大なる信頼を受けたケンペは前年(1956年)は病気のために一時休養を取ったものの、1957年はシーズン開始から精力的に活動し、プッチーニの『蝶々夫人』、リヒャルト・シュトラウスの『エレクトラ』そしてワーグナーの『ニーベルングの指環』チクルスを立て続けに振ったのでした。もちろんこの『指環』は聴衆からも批評家からも大絶賛、溢れるような音の洪水と高らかな歌声に全ての人が歓喜したという伝説の公演記録です。後にケンペは1960年にバイロイト音楽祭に登場、そこでの一連の『ニーベルングの指環』でも素晴らしい演奏をおこなっていたのは言うまでもありません。本盤はバイロイト音楽祭に登場する前年(1957年9月25日)にスタジオ録音されたステレオ録音です。ルドルフ・ケンペ(Rudolf Kempe)は1910年ドレスデン近郊ニーダーポイリッツに生まれ、1976年チューリヒで死去したドイツの指揮者。ケンペはカール・ベームやヘルベルト・フォン・カラヤン同様ドイツの歌劇場からの叩き上げで、その優れた職人的手腕とスケール雄大にして情緒豊かな音楽性、そして物腰の柔らかな誠実な人柄によってオペラにコンサートに国際的に活躍した名指揮者でした。1949〜52年ドレスデン国立歌劇場の音楽総監督、1952〜54年バイエルン国立歌劇場の音楽総監督のほか、ウィーン国立歌劇場、ロイヤル・オペラ、メトロポリタン・オペラ、バイロイト音楽祭などの指揮台に数多く登場したほか、1961〜63年と1966〜75年にかけてロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者、1965〜72年にチューリヒ・トーンハレ管弦楽団、1967〜76年にはミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者を歴任しました。1955〜56年に一時病気のため演奏活動を中断、病から復帰後、新たな意欲を燃やしてベルリン・フィルハーモニー管弦楽団やウィーン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮してEMIへの録音を盛んにおこなうようになり、精力的で一気呵成なものから、巨匠的な雄大なアプローチまで多彩なケンペの音楽をセッション録音することになります。ステレオ録音では、ベルリン・フィルとの有名なベートーヴェンの『英雄』やベルリオーズの『幻想交響曲』、ドヴォルザークの『新世界より』、リヒャルト・シュトラウスの『ドン・キホーテ』、などなど。 ケンペ独特の語りかけるようなフレージング、アーティキュレーションは、時として「あれっ?」と思うものの、それが人間味なのでしょう。その音楽の優しさ、潤いに感動。端正でオーソドックスなようでスケールが大きく大胆、心意気がオーケストラの楽員みんなのすみずみまで行きわたっているのが手に取るようにわかります。ケンペといえば、渋い、地味、本格派、といったイメージで見てきた。はたしてそれであっているかしら。
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