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自然体のカラヤンの美学が感じられる ― ブラームスの交響曲は4曲とも非常に濃厚・濃密で、〝味わいの深さ〟という点では、他のどの作曲家の交響曲よりも筆頭であるまいか。ヘルベルト・フォン・カラヤンはブラームス交響曲の全集録音をドイツ・グラモフォンで1960年代、70年代、80年代の3回行っています。いずれもオーケストラは、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団。ベルリン・フィルにおけるブラームスの演奏の伝統は、1887年にブラームスの友人だったハンス・フォン・ビューローがベルリン・フィルの芸術監督に就任したときにさかのぼります。カラヤンがしばしば好んで語ったように、ブラームスの音楽の解釈について、ブラームスとビューローの考えは常に一致したわけではありませんでした。ビューローが正確なテンポに価値を置いたのに対し、ブラームスはより緩急のある感情表現を好んだからです。後に芸術監督となるヴィルヘルム・フルトヴェングラーはブラームスの考えに共感し、優れた解釈で名をなしました。最近の新しいブラームス像をつくろうとする演奏では、やや失われた感がある。その豊かでほの暗いオーケストラの響きと、テンポへの自由な扱いといった演奏スタイルは、カラヤンも受け継ぐことになります。《交響曲第1番 ハ短調 作品68》は、カラヤンがもっとも多く指揮したブラームスの交響曲。キャリアの初期における重要なデビューコンサート ― 1934年アーヘン、1938年アムステルダム、1946年ウィーン ― で、この作品を指揮しています。1955年2月には、ベルリン・フィルの初のアメリカ・ツアーにおける最初のワシントン公演でこの交響曲を指揮しました。《交響曲第3番 ヘ長調 作品90》は、カラヤンは大抵の場合チクルスの一環としてのみ振りましたが、それとは対照的に《交響曲第2番 ニ長調 作品73》と《交響曲第4番 ホ短調 作品98》を彼は深く愛好し、数々の忘れがたい演奏を披露しています。1938年4月8日、カラヤンがベルリン・フィルのデビュー公演に選んだのも《第4番》でした。大方カラヤンの《第1番》はレガート過剰で切れ味にかけ重々しすぎる気もするが、この演奏はノリがよく金管や打楽器のリズムがアクセントとして良く効いていて〝無駄のない合理的な動きの統一的集合体〟が一番良く現れている。カラヤンは、その魅力的な容貌と優雅な身のこなしでたちまちにして聴衆の人気をとらえ、単にこの点から言ってもその人気におよぶ人はいない。しかも彼の解釈は何人にも、そのよさが容易に理解できるものであった。芸術的に高度のものでありながら、一種の大衆性を備えていたのである。元来レパートリーの広い人で、ドイツ系の指揮者といえば大指揮者といえども、ドイツ音楽にかぎられるが、カラヤンは何をやってもよく、その点驚嘆に値する。1970年代のブラームス交響曲全集のリーフレットには〝オーケストラの演奏会でブラームスが含まれているかどうかでチケットの売り上げが違った…〟等のことが書かれているが、確かに頷けるところもある。そして、カラヤンのブラームスはどの演奏も大変素晴らしいと思う。その理由の一つに〝ブラームス特有の重厚な音色を漲らせている〟という点だろう。チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」と、ブラームスの《交響曲第1番》は、カラヤンにとって録音の多いレコードですが、磨きがかかって最終録音が一番よい悲愴と対照的で、ブラームスの《第1番》は、その時々でアプローチが違っている。その点でレパートリーとしては特異。これを得意としたフルトヴェングラーから引き継いだ音を昇華させた、1960年代の演奏は素晴らしいものです。でもカラヤンの音楽としては1970年台が面白いでしょう。本盤はカラヤンとベルリン・フィルの黄金時代の十八番だけあって、華麗さと大迫力の両立した、長くこの曲の定番の地位に君臨するだけのことはある全集セットです。倍管に増やした演奏は、この上なくパワフルでグラマラス。力技がやや勝るところはあるが、しなやかさや歌に欠けることもなく、総じて聴き手を圧倒する出来栄えになっている。ブラームスの交響曲に関する発見や見識のある演奏とは無縁のアプローチで、カラヤン&ベルリン・フィルが確立した〝スタイル〟を存分に発揮した、オーケストラ音楽とはこうあるべきというカラヤンの信念がビシビシ伝わってくるゴージャスきわまりない演奏です。とにかく、4つのシンフォニーのどこを取っても自信みなぎる響きと表情に満ちあふれた演奏で、《第1番》の壮麗な威容は比類ないものですし、《第4番》でも確信にみちた輝かしいサウンドが一貫しています。この4作品をあくまでもドイツ・ロマン派シンフォニーの傑作として捉えたアプローチと、ベルリン・フィルの重厚華麗なサウンドが相まったその聴き応えには、脱帽するほかありません。そしてその評価の高い強烈な演奏を1970年代半ばに収録されたもので、アナログ時代末期のドイツ・グラモフォン・サウンドで全体の響きと個々の楽器の定位感のバランスがよくイギリスEMI録音より少ないマルチ・マイクの成果か、フィルハーモニーの長いホールトーンも適度に入り心地よい。そのあきれるばかりのブリリアント・サウンドには、やはり抗いがたい魅力があります。記憶に残るカラヤンのイメージが最も具現化された演奏だった。然し乍ら特に、この1970年代の全集は毀誉褒貶相半ばするものとなっている。
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