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お勧め!この一曲 ― ジョーン・サザーランドの歌うヴォカリーズを中心に、聴く機会の少ないロシア・ソ連の曲を集めた本盤の、ロシア的情緒を色濃く湛えた管弦楽とコロラトゥーラ・ソプラノが調和し、憂鬱な気分と軽やかなリズムの対比を際だたせたグリエールの《コロラトゥーラ・ソプラノのための協奏曲》がことの外魅力的だ。ヴォカリーズというのは、歌詞を伴わずに母音のみによって歌う歌唱法です。昭和歌謡曲の世代の皆様には、由紀さおりさんの「夜明けのスキャット」の一番といえばわかりやすいでしょうか。音楽の起源は小鳥のさえずりなどの動物の鳴き声を真似することからはじまり、ヨハン・セバスティアン・バッハやアントニオ・ヴィヴァルディら後期バロック音楽よりも前の16世紀ルネサンス音楽に、クレマン・ジャヌカンの「鳥の歌」は際立っています。18世紀半ばになると、ジャン=アントワーヌ・ベラールの編纂した曲集『歌の技芸』に、前期バロック音楽のリュリやラモーの歌曲のメロディーを歌詞なしで歌う声楽技巧の有意義な練習曲として掲載される。下って歌詞なしの練習曲に、ピアノ伴奏が付けられるようになって19世紀に流行。最も有名なヴォカリーズ作品は、1915年にソプラノ歌手アントニーナ・ネジダーノヴァのために作曲された、ラフマニノフの『ヴォカリーズ』であろうといわれる。当初はピアノ伴奏歌曲として作曲されたが、作曲者本人による管弦楽伴奏版で初演され、広く親しまれている。レインゴリト・グリエール(1875〜1956)は、ヴォカリーズによる独唱とオーケストラのための〝協奏曲〟として、《コロラトゥーラ・ソプラノのための協奏曲》を作曲している。歌詞がある訳では無いので、楽器としてソプラノの美しさを堪能できると名曲と思います。この曲は2つの楽章から構成されており、演奏時間は11分半ほどです。やや哀愁漂う雰囲気で曲は始まります。やがて、ソプラノが美しいメロディーとともに登場します。ソプラノは歌では無くスキャットのように楽器として、美しい響きを奏でます。それはあたかも、薄ぼんやりとした月明かりの中、ソプラノの響きが暗闇に光をもたらすかのようです。次第に静かになり第1楽章が終わります。爽やかで軽やかに第2楽章は始まり、ソプラノが春の到来でも喜ぶかのように非常にロマンティックで甘いメロディーを奏でます。それに答えて、オーケストラも高揚感ある演奏を続けて奏でます。ソプラノは自由奔放に、小鳥のさえずりのように軽やかで美しく、オーケストラもその美しいメロディーを高揚感を以って、歌い交わし奏でます。全曲はソプラノの息の長い響きとオーケストラの高揚感ある演奏で幕を閉じます。まだまだ知名度低い曲ですが、しかしサザーランドの美しいソプラノの響きをお聴き頂ければ、この曲もお気に入りの1曲に加えて頂けるのではないでしょうか。新型コロナウイルス感染の拡大に対抗するために、安倍晋三首相が緊急事態宣言を発令した一昨日、2020年4月7日の宵は、スーパームーンでした。東の空に上がった月は大きくて、白くくっきりとしていた。傍らではさくらが散り始めている、それぞれを見上げながら春おぼろの一時を〝秘曲〟尽くしの本盤で味わいました。
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