「 ブーレーズ、バレンボイムらのベルク/室内協奏曲ほか DE DGG 2531 007 STEREO」を通販レコードとしてご案内します。
機械的でない人間的色気のある音楽
6月18日はフランスが誇る20世紀の偉大な音楽家、ピエール・ブーレーズ作曲、《ル・マルトー・サン・メートル》(打ち手のない木づち)が初演された日(1955年)。戦後に生まれた最も革新的な楽曲のひとつ。当時30歳だった作曲者は、ストラヴィンスキーの賛辞をはじめ多くの人に歓迎され、この曲でもってその名を世界に知らしめることとなった。その非凡な才能は、作曲家と指揮者の2役を極めて高度な次元で行なっていたことにも表れる。作曲家として現代音楽界の先頭に立ち、指揮者としても楽譜を読む作業が丁寧で、作曲家・藤倉大をはじめとする若手音楽家から絶大な人気があった。藤倉が〝ブーレーズはまるでロックスターのよう〟と語る。
極みのヴィンテージ名盤DE DGG 2531 007 バレンボイム、ブーレーズ&ズーカーマン ベルク・室内協奏曲
- ピエール・ブーレーズ(指揮者、表紙写真の右)とダニエル・バレンボイム(ピアニスト、表紙写真の中央)、そしてピンカス・ズッカーマン(ヴァイオリニスト、表紙写真の左手前)がアルバン・ベルクの室内協奏曲でも格別の集中力に富む、決して機械的でない人間的色気のある音楽を創出している名盤。1977年の優秀録音です。独英仏語リーフレット付き。

-
ほとんど狂気に近い意志の上に、この作品は築かれている。
- ― 世界を微分し続ければ、最後には数学へと行き着く。自然が描く曲線に対して、人間が引く直線。その交差点にこそ、宇宙の理法が潜んでいるのかもしれない。自然は絶えず揺らぎ、音楽もまた本来は流動的な存在である。しかし音楽が譜面へと定着した瞬間、それは記号の体系となる。そこに刻まれた直線的な情報を、いかに読み解き、生命を吹き込むか。それこそが人間の知性であり、感性である。すべては曖昧さを孕みながら存在している。
- 音楽への探究を深めてゆくと、やがて「数」の問題に突き当たる。古代ギリシアのピュタゴラス以来、音楽は数学と並び、哲人にとって不可欠な学問であった。その思想は時代を超えて受け継がれ、ヨハン・ゼバスティアン・バッハの作品から、近代のバルトーク、さらには新ウィーン楽派の音楽に至るまで、至るところに顔を覗かせている。
- 西洋音楽史を遡れば、最初期の作曲家として知られるのは、神秘家にして修道女であった ヒルデガルト・フォン・ビンゲン である。彼女は幻視体験を記録し、神学者、説教者、医学者、薬草学者、詩人、言語学者としても活動した。その多彩な才能は、後世の人々を驚嘆させ続けている。
- 20世紀前半の音楽史において重要な位置を占める新ウィーン楽派の作曲家たちの中で、アルバン・ベルク はある意味で特異な存在だった。
- 師である アルノルト・シェーンベルク は後期ロマン派から無調へと進み、さらに十二音技法によって新たな時代を切り開いた。そして盟友 アントン・ヴェーベルン は、その世界を極限まで推し進め、後の前衛音楽の規範となった。
- しかし、その歩みは同時に、二十世紀音楽が抱えることになる大きな問題――聴衆との断絶――を広げるものでもあった。
- その中でベルクは、オペラ ヴォツェック によって商業的成功を収める。春の祭典 が二十世紀音楽の古典と呼ばれるように、《ヴォツェック》もまた一九二五年のベルリン初演以来、二十世紀オペラの古典として揺るぎない地位を築いてきた。
- さらに《ヴァイオリン協奏曲『ある天使の思い出のために』》に見られるように、ベルクは十二音技法の内部へ巧みに調性を織り込み、人間的な叙情を失わなかった。そのため彼の作品は新ウィーン楽派の中でも早い段階から受け入れられ、今日に至るまで広く愛され続けている。
- ベルクを理解する上で興味深いのが、「3」という数字への執着である。彼の作品には緻密な数的設計が隠されている。しかしその数学的構造は決して冷たくない。むしろそこには濃密なエロスが息づいている。知性と官能が矛盾なく共存している点こそ、ベルク芸術の本質なのだろう。
- 《室内協奏曲》はその象徴的な作品である。
- ヴァイオリンとピアノを独奏楽器とし、十三の管楽器がこれを取り囲む特殊な編成。演奏機会は決して多くないが、ベルクの創作理念が最も純粋な形で結晶した作品のひとつである。
- 冒頭主題にはシェーンベルク、ベルク、ヴェーベルンの名前が音列として織り込まれている。また楽章構成も驚くほど厳密で、第1楽章が240小節、第2楽章も240小節、そして終楽章が480小節という対称的構造を持つ。音楽は数学的秩序によって統御されながらも、そこから立ち上る響きはきわめて官能的である。
- この難曲において、指揮者 ピエール・ブーレーズ、ピアニスト ダニエル・バレンボイム、そしてヴァイオリニスト ピンカス・ズッカーマン は驚異的な集中力を発揮する。
- とりわけ第2楽章アダージョの叙情性は美しく、第3楽章ロンド・リトミコの闘争的なエネルギーは圧巻である。複雑な構造は一切説明的にならず、音楽そのものの躍動として聴き手に迫ってくる。
- ブーレーズの演奏には、曖昧な瞬間が存在しない。最初の一音から最後の一音まで、いや休符に至るまで、すべてが透徹した意識によって統御されている。しかしそれは機械的な精密さではない。むしろ極限まで明晰であるがゆえに、人間的な色気が立ち上がるのである。
- ブーレーズ自身の経歴を振り返れば、この演奏の説得力も理解できる。数学を学んだ後、パリ音楽院で作曲を学び、若き日は過激な前衛運動の旗手として知られた。やがて創設した ドメーヌ・ミュージカル を通じて戦後音楽の普及に尽力し、さらに IRCAM や アンサンブル・アンテルコンタンポラン を率いて現代音楽界に絶大な影響を与えた。
- その生涯を通じて彼が追求したのは、音楽の構造を徹底的に明晰化することだった。そしてその理念は、このベルク演奏において見事な形を得ている。
- 数学と官能。
- 秩序と情熱。
- 理性とエロス。
- 《室内協奏曲》とは、それら相反するものが奇跡的な均衡の上に成立している作品である。そして1977年のブーレーズ、バレンボイム、ズッカーマンによる録音は、その複雑怪奇な美しさを、これ以上ない鮮明さで可視化した名演として記憶されるべきだろう。
- ベルクが楽譜の中に封じ込めた数式は、ここで冷たい記号ではなく、生身の感情として響いている。数学が音楽になり、音楽が再び人間へと還元される。その奇跡の瞬間を捉えた録音なのである。
- ベルク:室内協奏曲、クラリネットとピアノのための4つの小品 作品5、ピアノ・ソナタ作品1。1977年6月パリ、ミュチュアリテ・ホールでのギュンター・ブリーストのプロデュースで、クラウス・シャイベのエンジニア、ウォルフガング・ステンゲルによるステレオ録音。1978年発売。
- 起源を示す印がなくてもよい。
- 音は音として存在し、
- 身体は身体として存在する。
- 理由より先に、美しさがあってよい。
- そして《ル・マルトー・サン・メートル》という奇妙な作品は、そのことを静かに教えてくれる。
- 打ち手のいない木づち。
- 誰も振り下ろしていないのに、どこかで鳴り続ける音。
- 生まれた場所を示す印がなくても、人は確かにここに存在している。
- そのことを証明するために、私は今日も耳を澄ませる。
- 遠いバーデン=バーデンの夏の夜から聞こえてくる、あの不思議な響きへ向かって。
-
ピエール・ブーレーズ《ル・マルトー・サン・メートル(打ち手のない木づち)》
-
― 1955年6月18日、バーデン=バーデン。その夜、戦後音楽史は書き換えられた
- 1955年6月18日、西ドイツのバーデン=バーデンで開催された国際現代音楽協会(ISCM)音楽祭。
- その日の演目の中に、まだ30歳になったばかりの若いフランス人作曲家の作品が含まれていた。
- 作曲者は ピエール・ブーレーズ 。
- 作品名は《ル・マルトー・サン・メートル(打ち手のない木づち)》。
- 後に20世紀音楽の歴史を変えた傑作として語られるこの作品だが、実はその上演そのものが危うく実現しないところだった。フランス選考委員会の内部では採択に反対する声が強く、音楽祭への出品を巡って激しい対立が起きていたのである。最終的には指揮者 ハンス・ロスバウト や関係者の強い後押しによって上演が実現した。
- そしてその夜。
- メゾソプラノのシビラ・プラーテと南西ドイツ放送交響楽団の奏者たちを率いてロスバウトが指揮台に立った。初演されたのは現在知られる九楽章版であったが、終楽章の結尾はまだ完成しておらず、作品はなお「進行中」の状態にあった。ブーレーズ自身が後に改訂を加え、完全版の形で聴かれるようになるのは翌1956年のことである。
- しかし、音楽が鳴り始めた瞬間、人々は何か新しい時代の到来を感じ取った。
-
シェーンベルクの《月に憑かれたピエロ》の戦後版
- ブーレーズ自身は《ル・マルトー・サン・メートル》を「私の《月に憑かれたピエロ》だ」と呼んでいた。
プロダクト・ディテール(ヴィンテージ盤)
-
レーベルDeutsche Grammophon
-
レコード番号2531 007
-
作曲家アルバン・ベルク
-
楽曲
- Side-A
- 室内協奏曲
- Side-B
- クラリネットとピアノのための4つの小品 作品5
- ピアノ・ソナタ作品1
- Side-A
-
演奏者
- ダニエル・バレンボイム(ピアノ)
- ピンカス・ズーカーマン(ヴァイオリン)
- アントニー・ペイ(クラリネット)
-
オーケストラアンサンブル・アンテルコンタンポラン
-
指揮者ピエール・ブーレーズ
-
録音年月1977年6月
-
録音場所パリ、ミュチュアリテ・ホール
-
録音プロデューサーギュンター・ブリースト
-
録音エンジニアクラウス・シャイベ、ウォルフガング・ステンゲル
-
録音種別STEREO
-
発売年1978年発売
-
製盤国DE(ドイツ)盤
-
レーベル世代ブルーラインレーベル
ショップ・インフォメーション(このヴィンテージ盤はショップサイトの扱いがあります。)
-
商品番号370117
-
レコード盤コンディション良好です(MINT~NEAR MINT)
-
ジャケットコンディション良好です
-
価格5,500円(税込)
-
商品リンク
-
ショップ名輸入クラシックLP専門店 ベーレンプラッテ
-
ショップ所在地〒157-0066 東京都世田谷区成城8-4-21 成城クローチェ11号室
-
ショップアナウンスべーレンプラッテからお客様へ
当店のレコードは、店主金子やスタッフたちが、おもにヨーロッパに直接出向き、実際の目と耳で厳選した、コンディション優秀な名盤ばかりです。国内で入手したものや、オークション品、委託商品はございませんので、安心してお求めになれます。
CDはamazonで購入できます。
CDはamazonで購入できます。
BERG & STRAWINSKY
DGGOR
1995-02-20
from 100年後でも聴いて楽しいアナログ名盤レコード https://ift.tt/Re3KY21
via IFTTT


