「 DE DGG 2707 103 カルロス・クライバー バイエルン国立管弦楽団 イレアーナ・コトルバシュ プラシド・ドミンゴ シェリル・ミルンズ ステファニア・マラグー ヴェルディ 椿姫(全曲)」を通販レコードとしてご案内します。
喜怒哀楽のドラマを千変万化に彩るクライバーの手腕。 ― 録音嫌いで知られた指揮者カルロス・クライバー(1930〜2004)が正規のセッション録音で残したオペラ全曲盤はわずか4つ。その中でクライバーが1970年以降に指揮したヴェルディのオペラは「椿姫」と「オテロ」だけですが、そのうち正規のセッション録音が行なわれたのはこの「椿姫」だけです。クライバーが「椿姫」を初めて指揮したのは1960年、ライン・ドイツ・オペラでのことで、それ以来シュトゥットガルトやミュンヘンで繰り返し取り上げ、最後に指揮したのは1989年、ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場での上演となりましたが、イレアナ・コトルバスを主役に据えた「椿姫」の新演出をバイエルン国立歌劇場でクライバーが指揮したのは1975年4月のことで、外題役のコトルバスはそのままに、アルフレードをプラシド・ドミンゴ、ジェルモンをシェリル・ミルンズというより強力な歌手に入れ替えて翌年5月に集中的な録音セッションが行われ、さらに1977年に追加のセッションを行なって完成させた。本盤で録音場所となったミュンヘン市内のビュルガーブロイケラーは馴染みがないが、1885年に開店したこのビアホールは1830人を収容できる大規模な空間を擁し、ヴァイマール時代以来政治的な集会にも頻繁に使用され、ヒトラーのミュンヘン一揆の舞台ともなった歴史的な建物でした。その優れた音響効果のゆえに、またヘルクレスザール以外に録音に適したホールがなかったミュンヘンでは、ステレオ時代にルドルフ・ケンペ指揮でオーケストラの録音にも重宝されていました。第1幕の前奏曲が終わって幕が上がる。その部分を聴いただけで、このオペラを指揮してのクライバーの素晴らしさがわかる。前奏曲の暗とそれにつづく部分の明の対比を、これほど鮮やかにきかせる指揮者はクライバーをおいて他にいない。このオペラの悲劇性を精妙きわまりない表現によって明らかにし、常に生き生きとした流れと劇的で鮮やかな変化を備えた演奏によって、音楽の最深部にまで的確な光を当てつくしている。同じ旋律だが第3幕は悲劇への前奏で、第1幕の前奏曲は《椿姫序曲》と言える音楽なのだ。クライバーの緻密で俊敏な指揮のもと、バイエルン国立管弦楽団は強靭で引き締まった筋肉質な響きを獲得し、オーケストラ・パートに込められた喜怒哀楽のドラマを千変万化に彩っています。テンポも響きもリズムもきりりと引き締まり、躍動感と旋律美を十二分に生かした指揮、そしてヒロインのコトルバスが最高だ。華やかさと品格と切ないニュアンスがすべて真実味を持って迫ってくる点において比類がない。ヴィオレッタという華やかでありつつも切ないキャラクターを繊細に描き出すコトルバス、アルフレードの直情的な感情の起伏をストレートに歌うドミンゴ、そしてジェルモンという身勝手かつ包容力のある父親像を具現化したミルンズと、主役3人に適役が配されているのも大きなポイントです。数多くの実力派が育っている現在、今なおオペラ歌手として世界で最も一般に有名なのは間違いなくドミンゴでしょう。持ち前の美声と優れた歌唱表現、凛々しいヴィジュアルなどを併せ持ったドミンゴは、ソリストとしてはもとより、3大テノールのひとりとしても世界中から愛されるだけでなく、指揮者としても活躍の場を拡げたり、ワシントン・ナショナル・オペラやロサンジェルス・オペラの芸術監督も務めるなど、多彩な活動を繰り広げています。また、1993年からはオペラリア(プラシド・ドミンゴ国際オペラ・コンクール)というオペラ歌手のコンクールを開催し、若い才能にチャンスを与えることに熱心なことでも知られています。ニーナ・シュティンメやブライアン・アサワ、ホセ・クーラ、森麻季、ロランド・ビリャソンらがここから巣立っています。
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