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バーンスタインとバルトークとの距離感。 ― 先日の鑑賞会で蓄音機の音をはじめて聞いた参加者が、それまで持っていたイメージと裏腹に音が大きい、昭和期初期のオーケストラとピアノの楽器がはっきり聴こえることに驚いていたが、ステレオ初期の本盤もバーンスタインの息遣いまでリアルに感じとれ、当時のアメリカの録音技術の凄さに圧倒されます。息遣いまで聞こえる距離に顔寄せあっているアイザック・スターンとレナード・バーンスタインのカバー写真からは裏腹、この盤の凄さは全く色褪せていません。スターンの美しい音色、安定した演奏はまさに巨匠芸。加えてバーンスタインならではの情念と狂気が尋常ならざる雰囲気を醸し出しています。名ヴァイオリニスト、スターンはバッハから20世紀作品に至る幅広いレパートリー持ち主で、ベルクやバルトーク、ストラヴィンスキー、バーバー、バーンスタイン、デュティユーなどの20世紀の協奏曲も演奏・録音した。室内楽でも、ユージン・イストミン、レナード・ローズと組んでピアノ・トリオの演奏や録音を行った。20世紀初頭のクラシック音楽界に、新ウィーン楽派と呼ばれる楽派がありました。これはシェーンベルク、ヴェーベルン、ベルクの3人の作曲家の事を指していて、12音音楽の創始者であるシェーンベルクを師に、あとのふたりは直接影響を受けた信奉者ですが、ベルクの場合、前の時代の和声音楽が築きあげてきた良さというものを残しながら、12音列技法に進んでいます。12音列技法というのは、1オクターヴに含まれる12個の音を全部使って、それが終わったらそれを反対から始めて、それが終わったら上下関係を逆にして … といった音価を平等に消費する感じでシステマチックなもので、ではベルクはどうしたのかというと、調的にも聞こえるように音列に工夫を凝らしています。人間の感覚は長調的なフレーズを最初に聴くと、それがとても印象に刻まれる旋律であってこそ、その後に続く不長音階をマスクする性質がある。結果、調音楽にはないグラフィカルな構造が加わることと、機能和声にはない独特の音の重なり方が生まれる。ベルクの音楽は、絶妙なバランスなのです。無調の音楽や12音技法に対してどれほど違和感を感じ疑問を持っていても、このベルクのヴァイオリン協奏曲だけは多くの人に素直に受け入れられてきました。スターンのヴァイオリンの表現力と言ったら、ちょっと言葉では言い表せないものがあります。前衛音楽なんですが、スターンが今までに培ってきた人間的な表現をそのまま表出させている。表現の塊ではないかというほどの勢いと同時に、もう神憑りです。バーンスタインと言えば思いの丈をぶつけるような粘着質な音楽作りが想像されるのですが、此処でのバーンスタインは真逆のスタンスで音楽に向かっています。そうだ、バーンスタインには作曲家というもう一つの顔があったんだ、と思いださせる瞬間で最初から最後まで作品の構造を、「これ、こんな音楽ですよ」と言わんばかりに丁寧に提示してみせます。
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