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エルガーの傑作の森 ― 英国を代表する指揮者の一人であったサー・エードリアン・ボールトは、1920年、忘れかけられていた〝交響曲第2番の甦演〟から作曲者であるエルガー本人から全幅の信頼を委ねられる事となり、以来〝エルガー演奏〟の第一人者として広く活躍、数多くの名演を残しました。この時エルガーはボールトにこう言って労をねぎらった。「素晴らしい音楽の連続だった。君に任せておけば、私の将来の評価も安泰だ」。実際、ボールトの演奏は、スコアに書かれた以上のことはほとんど何もしていない。ボールトは言っている。「作品が素晴らしいので、特に私が何もしなくともオーケストラに任せておけば大丈夫」。これはエルガーの多くの作品に言えることなのだが、エルガーの曲というのは、如何に優れたテクニックでも描き切れない「心」の部分がある。作曲家と演奏家の、心のある資質が同化した瞬間に、エルガー作品の名演奏が生まれるのだと思う。確かに技巧的な要素も求められてはいるのだが、それ以上に求められているものがあるのだ。それに応えられるかどうかで決まってしまう。実際、ボールトの指揮によるエルガー作品のほとんどが作曲者自作自演のものと演奏のテンポの点でも最も近い。多様なエルガー作品が聴かれる時代となった今こそ必聴の演奏。ボールトは、20世紀の英国の生んだ最もノーブルな指揮者として知られています。オックスフォード大学を経て、ライプツィヒ音楽院に留学、マックス・レーガーに作曲を学ぶかたわら、ゲヴァントハウス管弦楽団の指揮者だったアルトゥール・ニキシュに私淑し、大きな影響を受けています。イギリスに帰国後、直接親交のあったエドワード・エルガー、グスターヴ・ホルスト、レイフ・ヴォーン=ウィリアムズらイギリスの作曲家の作品を取り上げて高く評価され、1930年には新しく創設されたBBC交響楽団の初代首席指揮者に就任、幅広いレパートリーをイギリスに紹介しています。戦後はロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、バーミンガム市交響楽団の首席指揮者を歴任しつつ、イギリス音楽界の大御所として1981年、92歳という高齢で引退するまで矍鑠とした指揮活動を続けました。ボールトはヨハン・ゼバスティアン・バッハからハヴァーガール・ブライアンまで、幅広いレパートリーで卓越した演奏を聴かせる指揮者でしたが、最も得意とするのはイギリス音楽と、ニキシュの影響を強く受けたドイツ・オーストリア音楽でした。前者では、エルガーの交響曲第2番の復活初演やヴォーン=ウィリアムズの「ロンドン交響曲」改訂版の初演など、作曲者から盤石の信頼を置かれていたボールトならではの業績は数多く残されています。ボールトはエルガーから序曲「南国にて」について直接トレーニングを受けているだけのこともあり、他の追随を許さぬ名演奏を録音で聴くことができる。絶対的な自信に充ち溢れた本盤、隠れた名盤です。
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