懐の深さをしみじみ感じ入るフラグスタッドの隠れた名盤。 ― フラグスタートの骨太で朗々とした、呼吸の大きな歌は、人の声というよりも自然の音、風や嵐のように遠くからこちらに向かって響いてくる木霊のように感じられる。サー・エイドリアン・ボールトの指揮は存在感があり、色彩感に満ちたオーケストラ部分の魅力を存分に楽しむことができた。フラグスタートの「風の声」は、人間の情感の細やかな機微を超越した存在の如く響き渡る。不朽の純度の高い美しさとパワフルな声の持ち主キルスティン・フラグスタッド(1895〜1962)は英EMIにヴィルヘルム・フルトヴェングラーと収録した楽劇「トリスタンとイゾルデ」等々、屈指のワーグナー歌いとして名を馳せた。ノルウェー出身ということでリズムやイントネーションの問題で大きなハンディを持っていたと推測出来ますが、ヴァイキング譲りの大きな体格から発せられる奥行きを伴った深遠な声を聴くと大したハンディとは思えません。1930年代なかばにはすでに世界的な歌手として活躍、1953年にはオペラのステージから引退してしまいますが、コンサートやレコーディングでは活動を継続していました。彼女は第2次世界大戦中、夫の待つノルウェーに帰国したことからナチス協力者とされ、特にアメリカで数々の迫害を受けた。神のごときフラグスタートの名唱を味わえる素晴しい聖歌集。歌いだしは低音が多いのですが、徐々に高音になって高揚しながらも毅然とした郷愁を誘う歌の力は立派で堂々としていて感動的で、 胸が熱くなってきます。ワーグナーが好きな人、オペラ通の人におすすめします。ブリュンヒルデだけで終わっていない懐の深さをしみじみ感じ入るフラグスタッドの隠れた名盤。
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