夏休みの自由研究の参考に 12大ヴァイオリン協奏曲+3 〝第1回 ベートーヴェン〟 FAVORITE VIOLIN CONCERTOS

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通販レコード→NL 1982年発売 SILVER WITH DARK BLUE LETTERING, STEREO 3枚組 (110g/110g/110g), Stamper 18V/20V 10W/7K 1G/7V

ヴァイオリン協奏曲の王者

《鳴り響く思想 楽聖ベートーヴェンの傑作の森》

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲 ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品61

Ludwig van Beethoven: Violin Concerto in D major, Op.61(1806)

その気品ある美しさと、規模の大きさによって、「ヴァイオリン協奏曲の王者」とたたえられる大名曲。
ベートーヴェンの黄金期にあたる〝傑作の森〟の中心に、そびえ立つ大樹のような作品です。
ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は、現在ではメンデルスゾーン、チャイコフスキー、ブラームスのヴァイオリン協奏曲と並ぶ人気の作品です。なかでも、「ヴァイオリン協奏曲の王者」とたたえられる作品ですが、その気品ある美しさと、そのスケールの大きさが、軽妙洒脱な作品に慣れた、1806年の初演当時は聴衆からの反応はかなり冷やかなものであったと言われています。

苦難からの飛躍。

1802年、ベートーヴェンは31歳になっていた。ボンからウィーンにやってきて十年の歳月がたち、もはや音楽界・社交界で知らないものはいない。数々の演奏会の成功、相次ぐ楽譜の出版依頼、音楽好きな貴族たちとの交遊。そんな自分がまさか難聴になるなんて。しかも、快復の見込みがないと知った時の絶望ほど、想像を絶するものはないのではないだろうか。人一倍自尊心が強く繊細な心の持ち主であるベートーヴェンのこと、耳が悪いことを口にできるわけがない。彼は、意欲的に新境地を切り開いていく。聴覚のハンディは外との関わりを狭めてしまったが、内なる創作世界は限りなく広がっていった。このあとの10年ほどの期間をロマン・ロランは「傑作の森」と呼んだ。ベートーヴェンのひとつの頂点である交響曲第3番『英雄』、ピアノ・ソナタ第23番『熱情』をはじめとする超名曲の数々は枚挙にいとまがない。ことに1806年は交響曲第4番、ピアノ協奏曲第4番、弦楽四重奏曲第7番~第9番(ラズモフスキー第1番~第3番)、そしてヴァイオリン協奏曲を世に送り出した。

まったく新しい様式で書いた、協奏曲を超えた協奏曲。

初演は1806年12月23日。アン・デア・ウィーン劇場にて、フランツ・クレメントの独奏により演奏された。この時までベートーヴェンの作曲は完成しておらず、コンサートマスターのクレメントはほぼ初見でこの難曲を見事に演奏して、聴衆の大喝采を浴びた。ブーイングで演奏会が失敗することはなかったが、しかし、クリスマス。シーズンの演奏会ということで冒頭のティンパニがパストラルを演出するが、ヨハン・ゼバスティアン・バッハや、モーツァルトがヴァイオリン協奏曲で味あわせてくれる楽しさ。軽妙洒脱な音楽。はたまたウィーンっ子を虜にしたパガニーニによって、協奏曲は華やかなヴィルトゥオーゾを単純に楽しむもの、ということが共通認識としてあったはずで、とすると ― 互いに関連はあるものの、いくつもの楽想の存在、繰り返し出てくる音型。これは「何か違うぞ」と感じたことだろう。やがて、「脈略がなく支離滅裂」「品のない個所が何度も反復」「関連なく積み重ねられた大量の楽想」などと新聞で評された。酷い言われようである。事実それ以来めったに再演されることがなかったという、今言うところの風評被害を受けた。それまでの協奏曲にはない交響曲のような形態で、独奏ヴァイオリンさえも管弦楽とともに扱われている。そのことで、独奏者にとって要求されるのは、名人芸を披露することだけではなく、ひとつのパートとして、作品の構造や内面に深く関与することが求められている。個人の演奏技術はもちろんのこと、全体を把握し深く理解することが演奏上最も重要であり不可欠である。技術と意識の両輪が揃わねばならず、覚悟のいる曲であることは間違いない。交響曲と協奏曲を結びつけた、全く新しい協奏曲といえよう。作曲から220年。振り返れば。ベートーヴェンの黄金期にあたる〝傑作の森〟の中心に、そびえ立つ大樹のような作品です。彼らは、新たな音楽世界に最初に遭遇したのだ。

ティンパニは鼓動。

第1楽章はティンパニがD(レ)を四分音符で5回連打して始まる。まずオーボエが牧歌的で美しい第1主題を歌う。穏やかに進むと見せかけて突然全奏で変ロ長調の和音が現れる。しかし、すぐさまシレジア民謡による第2主題がまずフルート以外の木管で演奏される。やがて弦楽器がトレモロを繰り広げて金管も加わって次第に盛り上がり、オーケストラ提示部を締めくくる。落ち着いたところでようやく独奏ヴァイオリンが登場、独奏提示部に入り第1主題を奏でるが、ここでもティンパニのモチーフが現れる。主題ではないが、形を変えていろいろな楽器に何度も出てくるから、後の「運命」を予見させる、これが全体を通して最も重要な要素である。間奏を挟み2度目のソロは哀愁を帯びてくる。物悲しげな表情のヴァイオリンに、ファゴットがねだるような問いかけ、弦楽器群がうなずくかのようなやりとり。静かにたゆたうソロの、背後では弦楽、木管によるリズムがオスティナートの如く静かに続く。一頻りトランペットとティンパニがそれを引き継ぐと、紅潮した一夜が終わったようだ。燦々と輝く太陽に喜びを爆発させるカデンツァ。カデンツァの後、弦楽器がピッチカートで奏する上で独奏ヴァイオリンが第2主題を静かに奏でるが、徐々に力を増し、最後は強奏の主和音で力強く終わる。

ミステリアス・ムーヴメント。

第2楽章は安らかで穏健な主題が弱音器付きの弦楽器により提示される変奏曲。独奏ヴァイオリンは主題を担当せず第1変奏ではホルンとクラリネット、第2変奏ではファゴットが主題を担当する。第3変奏で管弦楽と続いて独奏ヴァイオリンが新しい旋律を歌い始めて中間部に入る。同じ日常が続いているような、夢の中にいるような。簡素な音符は研ぎ澄まされたようでいて、冷たさなどどこにもない。深い愛情があふれていて胸が熱くなる。弦楽器が重厚な響きで揺さぶると眠りから覚まされたか、「あぁ、すまない」と言い訳するような独奏ヴァイオリンの短いカデンツァとなり、そのまま第3楽章に入る。

ファゴットは伴侶。

ソロとオーケストラとの掛け合いが小気味良い狩猟音楽にわくわくさせたれていると、急展開。何やらメランコリックなメロディーが。想定外の流れに完全に引き込まれてしまう。ソロはすぐにオブリガートにまわる事態となってしまい主役はファゴットに。この後独奏ヴァイオリンは重音奏法を使いながら細かい経過句を経てロンド主題が戻り再現部。カデンツァはコンパクトながらヴァイオリンの多彩な表現力を存分に発揮する。長いトリルがカデンツァの終わりを告げると、低弦が冒頭主題の短縮形で切り込んでくる。調性をどんどん変えながら進みコーダへ。最後はオーケストラと共に駆け抜けるように爽快に幕を閉じる。演奏時間が45分前後の大曲である。第1楽章ですでに20分以上を要するが、ソナタ形式であり、第2楽章は変奏曲、第3楽章はロンドと、古典的な形式を踏襲している。覚悟のいる大曲だからと言って、聴くほうは構える必要はまったくなく、むしろ全体的には、素直な明るさに満ちている。

40年待って、新しさが認められた。

初演後も、しばらくは評価の定まらない時代が続いた中、この曲が受け入れられるようになるのは、初演から40年たった1844年5月27日のメンデルスゾーン指揮、当時10歳代前半だった天才ヴァイオリニスト、ヨーゼフ・ヨアヒム(1831~1907)独奏によるロンドン初演でありました。存在感も薄れていたこれを再び採り上げ、『ヴァイオリン協奏曲の王者』と呼ばれるまでの知名度を与えたのは、ヨアヒムの功績である。ヨアヒムはこの作品を最も偉大なヴァイオリン協奏曲と称し、生涯演奏し続けた。この時ベートーヴェンは、初演時の評価が影響してか、ヴァイオリン・ソロ・パートを改訂しており、これが現在耳にする版となっています。ベートーヴェン中期を代表する傑作の1つである。その完成度はすばらしく、『ヴァイオリン協奏曲の王者』とも、あるいはメンデルスゾーンの作品64、ブラームスの作品77の作品とともに『三大ヴァイオリン協奏曲』とも称される。 この作品は同時期の交響曲第4番やピアノ協奏曲第4番にも通ずる叙情豊かな作品で伸びやかな表情が印象的であるが、これにはヨゼフィーネ・フォン・ダイム伯爵未亡人との恋愛が影響しているとも言われる。彼は他にヴァイオリンと管弦楽のための2曲の小作品「ロマンス(作品40および作品50)」を作曲している。こちらも朗らかで気品ある美しさで親しまれ、聴かれています。

機会があれば聴いてみましょう。

このソロ・パートの改訂には、ベートーヴェンの友人で、ベートーヴェンの作品の1年前に先駆けてヴァイオリン協奏曲を作曲していた、ウィーンのヴァイオリニスト兼編曲家のフランツ・アレクサンダー・ペッシンガー(1767〜1827)も関わったと言われています。
このペッシンガーのヴァイオリン協奏曲ト長調 Op.9は、2016年5月にミュールハイム、マルティン教会に於いて世界初録音された、アントン・シュテック(ヴァイオリン)、マシュー・ホールズ指揮、アルパ・フェスタンテ演奏のCDが発売されています。
  • Record Karte
    • 早熟の天才ヴァイオリニストとして、永くデッカのスターであったチョン・キョンファのベスト盤ともいうべき協奏曲集。60年代・70年代・80年代の、それぞれ名盤としてよく知られた名演を集めたレアなボックスセットです。こうして改めて通して聴いてみると、キョンファの卓越した技術と繊細な音色、女性ならではとも感じる感情表現など、彼女がいかに特別な存在であったかがわかります。指揮者の顔ぶれもまさにオールスター。
    • 1963年、1970年、1979年、1980年。ロンドン、キングズウェイ・ホール/ウィーン、ゾフィエンザール録音。

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