「 DE EMI C187-93 534-35 ヴィルヘルム・フルトヴェングラー リンドベルイ=トルリンド ゼネルステット ストックホルム・フィルハーモニー管 ブラームス ドイツ・レクイエム」を通販レコードとしてご案内します。
これはレクイエムではない。 ― 聖トーマス教会の図書室に100年間しまい込まれていた、分厚い楽譜。器楽、歌の曲、合唱曲がたくさん書きつけられた手書きの楽譜を、孫の15歳の誕生日におばあちゃんがプレゼントします。その楽譜は音楽史の至宝。ヨハン・ゼバスチャン・バッハの〈マタイ受難曲〉の蘇演にも力を注いだメンデルスゾーンのスタイルは先人達(シュッツやバッハ)の伝統的な作曲技法の延長線上で、彼独自の透明感のあるハーモニーと流動的な美しいメロディーが展開される。メンデルスゾーンが没して、もはや170年も経って、知られているとはいえないが、ア・カペラの宗教作品も数多くある。メンデルスゾーンは、詩篇100番に2曲作曲している。同一の詩に、違った音楽的解釈で強調しているのが興味深い。さて、メンデルスゾーンの没後に音楽活動を始めたブラームス。ひとつの詩のフレーズをメロディーとして音楽的に表現するために、実用的な典礼音楽の用途を超え、苦悩と解放、憧れ、畏れ、驚き等、繊細な音の扱いと卓越した和声技法でその内面の真実を浮かび上がらせる。ロマン派の作曲家にとって宗教的な感情、高揚と浄化を創作の源泉とするなら、彼の特徴である半音階を多く含んだ旋律、転調の効果、ハーモニーの音響的な密度の濃淡でその精神世界を表現している。音楽の役割は詩や文章が表現している情景、感情の流れ、メッセージを音楽的要素 ― 音程、リズム、ハーモニーを駆使して人々に伝えることにある。「レクイエム」は死者を鎮魂するための宗教音楽のことですが、ブラームスは《ドイツ・レクイエム》とこの曲のスコアの表紙に書いた。彼が言うには、慰められるべきは死者ではなく、残された生者なのであり、そういった思想で作曲されている唯一の曲である。そこでヴィルヘルム・フルトヴェングラーの演奏についてだが、音楽の真髄はリズムに始まり、リズムにつきることを雄弁に物語っている。フルトヴェングラーはアウフタクトを大切にすると同時に、音楽に生気あるリズムを注入する。リズムに生気を持たせることにより、ゲサンク・フラーゼ(旋律楽句)をまさにゲサンク(歌)として、自然に再現できるという指揮論を打ち立てた。その本質は、オーケストラ曲だけではなく、オペラと声楽曲におけるソロとコーラスにおいても余すところなく発揮されている。本盤で聴ける内容は、その顕著な一例。当初、日本コロムビアDXM141-2(71/12)で発売が予定されテスト盤も出来ており、レコード芸術誌1972年1月号に月評が掲載されている。予定通り発売されればこれが初出盤となっていたが、東芝から発売されるまで待たされた。当時の英フルトヴェングラー協会が持っていたユニコーン・レーベルの発売権がEMIに移ったためでもあろうが、〝ブーン… ブーン…〟という音が混入している。このノイズは1943年5月のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とのストックホルムでの録音でも同様だから、当時の英マルコニー製の巨大なテープレコーダーのノイズと思われる。しかし、客演ながら楽章を追うごとに熱気を帯びる。凄まじい迫力で盛り上がり、阿修羅のように荒れ狂う。演奏は不満を払拭してあまりあるもので、同曲の他と比べても録音状態を考えれば、唯一まともに聴くことができる巨匠の《ドイツ・レクイエム》といえる。悪い状態の演奏会の録音をレコードとして発売することにした本盤は、しかも慰めを目的としている演奏とは思えないにも拘らず、他盤を凌ぐ魅力と説得力を獲得している。
- Record Karte
- 1948年11月19日ストックホルムでのモノラル、ライヴ録音。1972年リリース。
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