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〝この美しさはまるで天使のようだ〟 ― 加藤周一の『羊の歌 ― わが回想(岩波新書 青版 689)』に、戦時下のある夜、空襲の恐怖に晒されながら灯火管制下フランクの《交響的変奏曲》を蓄音器でかけるというエピソードがあった。政府は、「本土決戦」と称して、「竹槍戦術」「焦土戦術」「敵を水際にひきつけて粉砕する」策などをまことしやかに唱え、大新聞までもが「一億玉砕」と書き、「悠久の大義に生きる」大和魂を賛美していた、そんな異様な時代、医者でもあった著者は東京大空襲で傷を負った患者に忙殺されながら、つかの間の時、医局の部屋から夜空を見ながら小型蓄音機でセザール・フランクを聴いていた。無論「敵性音楽」なのでこっそりと人目を忍んでだ。針を落としたのは恐らくアルフレッド・コルトーの録音盤であろうか。ピアノ協奏曲の体裁を採りながらも凡百のコンチェルトとは異なり、妙技披歴主義とまるで縁がない。魂の飛翔そのものの音楽といおうか。息を潜めて仲間たちと聴き入る。ほの暗い室内で15分間だけ現実が消滅し、崇高な精神があえかな幻影のように現れる。自然、街、女、芸術がいかに人生を彩ってくれているものであるか。加藤はふと独りごちた、〝この美しさはまるで天使のようだ〟と。新型コロナウイルス感染拡大を防止するためにと自主的に2月は中止した、毎月第4日曜日に行ってきた蓄音機でSPレコードを楽しむ鑑賞会も、今日も行えず。巨匠パーヴォ・ベルグルンドは、シベリウス専門指揮者のような扱いで特に有名でしたが、実際のレパートリーは幅広く、北欧音楽とは縁のあるヴォーン=ウィリアムズはもちろん、「クラシック名録音究極ガイド」の60番に推されているショスタコーヴィチの一連の交響曲も積極的にとりあげ、見識ある演奏を聴かせていました。スメタナの連作交響詩「我が祖国」全曲、ブラームスの交響曲全集といった作品では、いぶし銀の芸風の持ち主。音色の地味を絵に描いたような演奏でただでさえ地味なフランクの交響曲がますます目立たないものになっているが、聴いているうちに音楽自体がむくむくと巨大なものに成長していくまさに大家の風格。シルヴィア・ケルセンバウムはリスト弾きに数え上げられていた腕前。五つ星をつけます。
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