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すべての人々はみな兄弟となる ― というフレーズは、ベートーヴェンの〝第九〟の精神を象徴する言葉としてよく引用されます。フランス革命前夜、ボン大学でシラーに関する講義を受けた若きベートーヴェンは、頌歌「歓喜に寄す」と出会い、その思想に大きく影響を受けました。その22歳のときに曲をつけたいと語っていたらしいので、それを53歳のときに初演した〝第九〟の起源と考えると、30年以上もかけて完成させたことになります。ベートーヴェンが独唱と合唱を伴う大規模な交響曲を構想するに至るまでにも、幾度と無く試みられています。交響曲第5番「運命」にも見られた「苦悩を突き抜けて歓喜に至る」というプログラムの終着点は、〝第九〟への道標だったのです。ウィーンで活躍したベートーヴェンが〝第九〟の作曲を始めた頃には、既にナポレオンが没落してウィーン体制が成立、貴族階級の復権により自由主義が弾圧されていました。貴族を嫌う自由主義者のベートーヴェンにとって、若い頃から傾倒していたシラーの詩に曲をつけて〝第九〟の第4楽章で人々の声で以って歌われる「歓喜の歌」で具体化したと思われます。日本の大衆が〝第九〟を聴いたのは、1919年3月22日のエンゲル・オーケストラが出演した和洋大音楽会。現在日本各地で年末の風物詩ともいえるほどの恒例行事として演奏されるのは、黒柳徹子の父、黒柳守綱がコンサートマスターを務めていた新交響楽団 ― NHK交響楽団の前身が昭和4年に演奏したことに始まる。第4楽章に入ってしばらく器楽だけで言い合っているような音楽がつづいて、制する如くバリトン歌手がすっくと立ち上がり、「おお友よ、このような音楽じゃない」と歌い出す場面は、コンサートで何度体験しても勇ましい。付き従って合唱が、「もっと喜びにあふれたメロディを歌おう!」「フロイデ!(歓喜だ!)」と続いて、あの「歓喜の歌」を歌い出します。シラーの詩に出てくる言葉は西洋人には直感的に理解できても、「天上の楽園の乙女」とか「炎を飲む(炎に酔いしれる)」などと聞いても、キリスト教に馴染みの薄い日本人にとっては、そのままの日本語に訳しても何のことかわからないように思います。しかし、「勝利に突き進む英雄のごとく、自らの道を行け」「抱擁と接吻を全世界に」「すべての人々は兄弟になるのだ」などなど、混迷する現代にも通じるメッセージがてんこ盛り。歌詞そのまま素直に解釈すると、地上では喜びも苦しみもあるが、大きな困難を乗り越えて天上の世界 ― 理想の楽園に至ると永遠の幸福が得られる、と受け取れば、神々の世界を讃える歌としては、ストーリーが単純でわかりやすくなるでしょう。そして、昭和22年に、戦後の新しい時代にふさわしい明るくわかりやすい歌の指定教材として、〝第九〟の主題に岩佐東一郎の訳詞をつけた「よろこびの歌」が小学6年の音楽の教科書に掲載されました。平成7年の新学習指導要領により共通教材は廃止されましたが、その間約50年も教科書に載り続けてきたので、「晴れたる青空ただよう雲よ」で始まる、平易な歌詞でとてもわかりやすい、誰でも知っている有名な歌で、ベートーヴェンが作ったということも知られているのも当然でしょう。年末恒例行事として日本中で第九が演奏されている現在、ウィーンでベートーヴェンが喝采を受けた初演の後ワーグナーが復活させるまで一般の人々には理解されなかったほど難解な第九が、日本人には身近な親しみを感じる曲になったと考えられます。「よろこびの歌」が、シラーの詩自体の翻訳とはかなり違うけれども、キリスト教に馴染みの薄い日本人にもわかりやすくその精神を伝えようとしたものでしたが、「よろこびの歌」にはっきりと出てこない〝すべての人々はみな兄弟となる〟というフレーズこそ、ベートーヴェンが強調しておきたかったメッセージ。
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