ルーツにモーツァルトを感じる、素直な情感に満ちた爽やかな、夏に聞く山の音楽。 ― 南フランスの貴族の家に生まれた作曲家、ポール・マリ・テオドール・ヴァンサン・ダンディ(Paul Marie Theodore Vincent d’Indy, 1851~1931)は教育家、理論家としても大きな影響力をもった人物でした。ダンディの作品は、今日ではあまり演奏されていないが、純粋で崇高な作品を残しています。南フランスの自然派作曲家である彼の音楽には、自然に対する深い愛情の吐露が感じられ、どれもが高貴なフランスを想像させる快作です。最も有名曲は《フランス山人(やまびと)の歌による交響曲》(Symphonie sur un chant montagnard français)。交響曲第1番「フランス山人の歌による交響曲」ト長調 Op.25 が正式ですが、〝セヴェンヌ交響曲〟(Symphonie cévenole)のタイトルでも親しまれています。第1楽章冒頭のコール・アングレのメロディーが低音の木管のユニゾンに導かれて出てくるあたりが、モーツァルトのセレナード変ロ長調「グラン・パルティータ」K.361(370a)の第3楽章を思い起こさせます。その懐かしい響きの中にダンディが聞き覚えた民謡が流れる。これは多分にセヴァンヌの美しい山々を望むヴィヴァーレーの山地に由来しているんだろう。南仏のセヴェンヌ地方は作曲者ダンディの祖父の出身地で、13歳のとき初めてここを訪れて、すっかり心を奪われてからは、ほぼ毎年のように彼は自分の故郷であるその地を訪れ、印象的な牧歌を耳にし、そこからインスピレーションを得たと言われている。牧歌的な山の美しさがホルンの響きと溶け合って鳴る。ピアノの協調的な響きの中に、陽の当たる緑の原野に雲が走る風の速さや、濃い影の広がりをまざまざと思い起こさせる。一気に作曲されたこの作品は極めて率直な情感に満ちていてひととき耳を楽しませてくれる。〝交響曲〟と題されながら、ピアノが独奏楽器として先導するものの、でしゃばることなく控えめ。ともすればオーケストラの一楽器としてピアノは全体の響きに溶け込むよう、ピアノ協奏曲に較べれば調和的に書かれている。そのためだろうか。この曲をSPレコード時代からフランスの演奏家がよく手がけているが、フランス以外の巨匠ピアニストはきわめて稀。その点、本盤のチッコリーニは本当に良いピアニストで最高です。サティの全集で知られるチッコリーニだが、情緒的というよりは知的、感覚よりは知覚に訴えてくる演奏がサティでは物足りない人もいたのではないか。その点、描写的でありながら厳格な書法で書かれたダンディの作品は、初期の作品でありながら驚くほど甘美で色気たっぷりで、彼にぴったりのレパートリーといえる。アルド・チッコリーニ(Aldo Ciccolini)は1925年生まれ、イタリア・ナポリ出身のピアニスト。9歳で作曲家のチレアに見い出され、ナポリ音楽院に入学。1942年にショパンのピアノ協奏曲でデビュー。1949年にパリのロン・ティボー国際コンクールで優勝し、パリ・デビューを果たす。1969年にフランス籍を取得。1971~1988年、パリ音楽院の教授を務める。1999年12月に在フランス50周年記念リサイタルを開催し、フランス政府より国家功労賞、芸術文化勲章、レジオン・ドヌール勲章叙勲など受賞歴も多い。英EMIレーベルにフランス、イタリアものを中心に膨大な録音歴を誇る。2015年2月1日、パリ郊外の自宅にて永眠。享年89。指揮者セルジュ・ボードはチェコ管弦楽団の音楽監督として名を残していますが、遡ること1969年に地方オーケストラの育成を掲げた文化省からフランス南部を委任され、ローヌ=アルプス管弦楽団(現リヨン管弦楽団)の監督となって、クリヴィヌ黄金時代への礎を築いた地方興隆の功労者。→コンディション、詳細を確認する
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