ミツバチのささやき ― スペインのある小さな村に『フランケンシュタイン』の巡回上映がやってくる。6歳の少女アナはスクリーン上の怪物を精霊と思い、姉から怪物は村外れの一軒家に隠れていると聞いたアナは、ある日、その家を訪れる。そこでひとりの謎めいた負傷兵と出会う。一人の少女が体験する、現実と空想の世界。ビクトル・エリセ監督長編第1作「ミツバチのささやき」は、スペイン・フランコ独裁政権下で撮影された。原題の〝EL ESPIRITU DE LA COLMENA/SPIRIT OF THE BEEHIVE〟を直訳すると、「蜂の巣の精霊」は、詩人であり劇作家のモーリス・メーテルリンクによる蜂の生活について書いた本の中から引用されている。それは蜂たちが従っているかのように見える、強力で不可思議かつ奇妙な力、そして人間には決して理解できない力を、この一文は表している。この映画が製作された1973年には、フランコ総裁による独裁政権の厳しさは当初ほどではなかったものの、未だ公に政権を批判することなどできない時代であった。そんな情勢の中、政府批判の検閲を逃れる方法をルイス・ブニュエル他スペインの芸術家達は心得ており、エリセ監督もまた作品に象徴化を多用し、メッセージを表面に出さないことで検閲局の審査を通していた。この 『ミツバチのささやき』から10年。長編第2作は、家族の中で孤独に苛まれて故郷〝エル・スール〟(スペイン語で〝南〟の意味)を捨て、北の地へ移り住んだ父親が自殺に至るまでの姿を、スペイン内戦や彼の忘れ得ぬ恋人への想いを絡め、その娘の目を通して回想するヒューマン・ドラマだった。この映画音楽として、ラヴェルやシューベルト、グラナドスなどクラシック作品が彩る。主題のように登場する「エン・エル・ムンド」は、スペインの舞曲。映画監督にはさまざまなタイプがあって、撮影中から音楽を構想しながら撮っている監督もいる。「エン・エル・ムンド」は、歌謡曲みたいな風情で映画の前半と後半の二度出てくる。主人公の父娘の思い出と別れを象徴する切ない場面で、映像の中で実際に演奏される。これが映画音楽だな、と再認識させられる。つまり、音楽は本来、言葉に出来ないなにがしかの重要な本質を担っているべきものなのじゃないかな。古来より、音楽は人々に喜怒哀楽などの複雑な感情を表す手段を与え、一つの芸術のジャンルとして万人の心を豊かにしてきた。その土地の民により伝承されてきたメロディーや楽器、歌詞などを通して、我々は各地の風土や歴史を垣間見ることができる。1940年初演のホアキン・ロドリーゴの「アランフェス協奏曲」といった、日本でもよく知られる魅力ある作品も見られたが、1920~1930年代のドビッシーやラヴェルなどの近代音楽の影響下の自由な気風と、1950年代のクリストバル・ハルフテルやルイス・デ・パブロ等の現代音楽派の台頭に挟まれた1940年代の音楽は、「空白の時代」と認識されている。1936年にスペインで勃発した内戦やその後のフランコ独裁体制期の音楽事情はどのようなものであったのだろうか。ゴンザロ・ソリアーノはスペイン南東部アリカンテに生まれ、マドリードに没したアリシア・デ・ラローチャ以前のスペインを代表する名ピアニストである。ソリアーノは生まれ故郷のアリカンテでデビューするもスペイン内戦の勃発によりキャリアを中断。そして第二次世界大戦終了と同時に演奏活動を再開し、1947年には国外でもコンサートを開き、1954年には初のアメリカツアーを行った。ソリアーノといえばやはりお国物、アタウルフォ・アルヘンタとラファエル・フリューベック・デ・ブルゴスの2種あるマヌエル・デ・ファリャの「スペインの夜の庭」が代表盤だが、エンリケ・グラナドスのピアノ曲も有名。本盤の《スペイン舞曲集》、それぞれの曲について、ソリアーノの演奏についても後半で一緒に解説しています。→コンディション、詳細を確認する
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