マーラーへのオマージュであろうか ― 英国の作曲家ベンジャミン・ブリテンは、独唱と室内編成のオーケストラのための連作歌曲を好んで作曲した。主要なものとして、イリュミナシオン(1939年)、セレナード(1943年)、そして本盤の《夜想曲》(1957~58年)が挙げられる。「イリュミナシオン」はソプラノ独唱と弦楽オーケストラのために書かれ、「セレナード」ではテノール独唱と弦楽オーケストラにオブリガート(助奏)楽器としてホルンが加えられた。《夜想曲》ではさらにこの手法を推し進め、テノール独唱と弦楽オーケストラに加え、曲ごとに異なるオブリガート楽器を用いた。《夜想曲》というタイトルのとおり、ブリテンはこの歌曲集を構想する上で〝夜〟や〝夢〟にまつわる英語の詩を8編選んだ。取り上げた英国古今の詩人はパーシー・ビッシュ・シェリー、アルフレッド・テニソン、サミュエル・テイラー・コールリッジ、ウィリアム・ワーズワース、ジョン・キーツというロマン派の詩人たちを中心に、16、17世紀のウィリアム・シェークスピアとトマス・ミドルトン、そして20世紀の戦争詩人ウィルフレッド・オーウェンです。8曲の歌曲から成るが、これらは切れ目なく演奏され、まるで夢と現実の境界をさまようような幻想的な世界が繰り広げられる。そこには甘美な夢もあれば悪夢もあり、眠れぬ夜もあれば永遠の眠りもある。ブリテンの多くのオペラや声楽曲と同様に、《夜想曲》もテノール歌手、ピーター・ピアーズ(1910~1986)のために作曲された。《夜想曲》の作曲は1957年末から1958年にかけて、ブリテンのオールドバラの新居で進められた。初演は1958年秋のリーズ音楽祭。ブリテンとピアーズは1936年に出会って以来、演奏上のパートナーとしてのみならず、同性愛が非合法な時代に私生活でもパートナーであった。そのピアーズの声はけっして大きくなく、またいわゆる美声でもなかったが、表現力豊かで言葉のニュアンスを伝える力に秀で、ブリテンにインスピレーションを与え続けた。作品は1942年にニューヨークで知り合っているマーラーの未亡人、アルマ・マーラーに献呈された。これはオーケストラ付きの連作歌曲のジャンルで名作を残したマーラーへのオマージュであろうか。
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