軽やかでありながら華麗、しかも燃えるような情熱を内に秘めた唯一無二のパフォーマンス ― 夭折の天才が残した、歴史的にも貴重な記録が刻まれた一枚。多数の名演奏、名録音が存在するショパンのワルツ集のなかでも別格、ひときわ光芒を放っている逸品。フランスで身に付けた華麗さや洗練さと、ラテン的な情熱が絶妙なバランスを保っている。33歳で夭折した天才、ディヌ・リパッティが遺した名盤のひとつで、自身の行く末を知っていたのか、時に疾走し、時にたゆたう緩急絶妙のテンポ変化、その結果として生まれる瑞々しい歌と躍動感が作品と一体となった稀代の名演。リパッティが、20世紀のピアノ演奏史に燦然と輝いているのは、単に残された数少ない録音の素晴らしさからだけではと思います。リパッティは録音に対しては何時も真剣で一枚のレコードが完成するまでは何度もテイクを重ね、それがより完成度を高めて、結果として強い説得力を生んだと云われている。彼のレパートリーはけしてせまいものではなかったが、とくに、バッハ、モーツァルト、シューベルト、シューマン、ショパンを得意としたが、ベートーヴェンなどもリサイタルではかなり弾いている。彼が一旦とりあげた曲に対しての表現の追及の厳しさは、たとえば、ベートーヴェンの「皇帝」協奏曲を弾くために4年がかりで研究と練習を積み、チャイコフスキーの協奏曲を弾くために3年を費やしたという話にその一端が伺われよう。それは、このレコードの曲順にも反映しているといえる。一般的に出版されている楽譜には14曲あるいは17曲のワルツが収載されており、CD時代になると17曲は当たり前。ショパンの存命中に出版されたのはそのうち8曲で、没後ユリアン・フォンタナによって6曲が出版されました。その後、さらに3曲が発見されています。この17曲以外にも草稿が2曲存在しており、全19曲を録音している演奏も多い。シプリアン・カツァリスのワルツ集が、全19曲を録音した最初のCD発売と謳い文句があるものでした。さらに、紛失した作品が3曲あります。本盤の曲目トラックは後述のとおり。ショパンが練習曲集で意図し、前奏曲集で為してみせた試みを、ワルツ集として一貫性をもたせたかったのか。ショパンはポロネーズ、マズルカ、ワルツと三拍子の舞曲を好んで書いています。ポロネーズでは民族意識を芸術作品として結晶化し、マズルカでは素朴な望郷の念を歌っています。そこに含まれるポーランド風の旋律やリズムは、フランス人には歴史深い異国を想像させ、ポーランド人には郷愁を思い起こしたことでしょう。しかし、表面的な気分を表現したワルツでは満足できなくなってしまっていたショパンの、三拍子のリズムをきっかけに次々といろいろな楽想が登場するワルツは、移り変わり行く心情の表現にも適しています。ショパンの心を反映した小品という点で、マズルカとワルツは似ています。実際、ショパンのワルツにはマズルカ風のリズムが混ざる作品もあります。そのためか、「私がワルツを作ると、どういうわけかマズルカになってしまう」という、自嘲気味な言葉も残っています。曲数ではマズルカが多いが、リズムの縛りが息苦しいし、ショパンのワルツは踊るためのワルツではないから、練りに練った配列とアゴーギグを組み立てたのだろうか。数少ない、しかしいずれも宝石の輝きに似た貴重さを持つリパッティの遺産のうち、おそらく最も想いが伝わってくる。何度聞いても素晴らしい。まるでリパッティ自身が作曲した曲を、本人自身が演奏している様に聴こえてくるのですが。違うでしょうか。サンソン・フランソワもアルトゥール・ルービンシュタインも素晴らしいのですが、リパッティには敵わない。ショパンのワルツ演奏として最高のものです。ショパンの美しい響きの中に込めた悲しみや怒りのような感情までもが、リパッティの洗練された演奏から伝わってきます。
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