GB DECCA LXT2910 エイドリアン・ボールト ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 ヴォーン=ウィリアムズ 交響曲5番

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34-5492

商品番号 34-5492

通販レコード→英オレンジ銀文字盤

試練を乗り越えた者の心にある、真の平和を描いている。 ―  ヴォーン=ウィリアムズの交響曲第5番は、1938年から1941年にかけて作曲された。この時期はオペラ「天路歴程(The Pilgrim’s Progress) 」に取り掛かっており、この交響曲もオペラから多くの主題が採られている。「天路歴程」は、17世紀後半、イギリスのジョン・バニヤンが書いた物語で、プロテスタント社会で最も読まれた宗教書とされている。滅亡の市に住む男が神の都への巡礼に出、「落胆の沼」や「死の影の谷」などに遭遇し、ある時は「虚栄の市」で投獄されるなど、いろんな苦難にあいながらも、信仰を持ち続けて遂に天国の都にたどり着くというもの。いわゆるイギリス郷愁たっぷりの映画音楽的ヴォーン=ウィリアムズ節。20世紀中庸に書かれた交響曲としては現代音楽の最先端を切り開いたというような曲でもないし、激しい緊張感や聴く者をぞっとさせるような奇怪なフレーズもないので、刺激に乏しく話題に登り難いのだろうけど、音楽は激しさや話題性だけで評価するものでもない。交響曲でさえ実演に触れることは滅多にないヴォーン=ウィリアムズなので、このオペラ上演に接することなど奇跡に近いだろう。しかし、ヴォーン=ウィリアムズの楽曲は膨大な録音遺産に恵まれている。このオペラと精神を同じくする交響曲第5番も、物語の基本であるキリスト教徒の遍歴の目的地である、天国の平和な幻想が色濃く反映されている。試練を乗り越えた者の心にある、真の平和を描いているのだ。このため交響曲第5番はヴォーン=ウィリアムズの交響曲の中でもとりわけ平和な雰囲気と、抒情的なフレーズに溢れている。特に第3楽章「ロマンツァ」はその傾向が強く、まるで映画音楽を聴いているようないい気持ちになる。この楽章には作曲家の肉筆スコアに「天路歴程」からの引用句が前置きされている。「この場所に十字架が立っており、少し前に聖墓があった。それから彼は『あの人はその悲しみによって私に安らぎを与え、その死によって私に生命を与え給うた』と言った」。何やら曰くありげな神秘的なムードにピッタリだ。本盤は1953年録音。交響曲第2、3、4、6番を初演するなど、ヴォーン=ウィリアムスの音楽を世に広めることをライフ・ワークとしていたボールト卿による録音となった。サー・エードリアン・ボールト指揮の1952〜1956年のモノラル録音が第1回のヴォーン=ウィリアムズの交響曲全集。作曲家存命中で、まだ第9番が作曲されていなかった頃で第1番から第8番となる。デッカならではの優れた技術により、モノラルとはいえディテールは克明で、なおかつ質感が良好に収録されているのも嬉しいところ。これぞイギリス音楽のイメージとぴったりの安定感と抒情を湛えた名演。ボールトというと、長命だったこともあってか、晩年の老成した演奏のイメージ ― 佇まいから受ける印象も、よくよく聴くと吟味された拘りがある。映画音楽的な音楽であろうと、ボールトはメロドラマに墜ちず、あくまで実直に曲のフレーズの存在感を高め、ハッキリとした印象を打ち出している。フォーマルの装いが体型にフィットサイズであることのみならず、ネクタイピンからカフスまで仕立てに含まれているようなものである。 ― が強いのですが、1950年代までの彼は、ときにかなりアグレッシヴな演奏もおこなうという、爆演も辞さぬ積極的な芸風の持ち主であったことはマニアにはよく知られています。この全集でも、名高いEMI盤にはない過激な表情、ヴァイタリティに富む音楽づくりが実に魅力的。これこそ、作曲者から認められ、初演を任されていた当時のボールトの芸風に近いもの、つまり作曲家の具体的なイメージに最も近い演奏ということになるのではないでしょうか。もちろん、ここにはEMI盤のような老成した佇まいはありませんが、この快活さ、ダイナミックでホットな雰囲気には独特の魅力があるといわざるをえません。

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